【2026年10月〜】輸出代金を現金で受け取ると免税にならない?|輸入許可書が必要になった理由と事業者の対策
執筆者 中国語対応税理士 岩谷敦史

2026年10月14日時点の情報です

2026年(令和8年)10月1日から、輸出の代金を現金で受け取った場合のルールが厳しくなりました。これまでどおり税関の輸出許可書を保存していても、輸出先の国の「輸入許可書」にあたる書類がなければ、消費税の輸出免税を受けられません。

海外の取引先に商品を販売し、代金を現金で受け取ってきた事業者にとっては、影響の大きい改正です。

この記事では、

  • なぜこのルールができたのか
  • 何が変わったのか(対象になる支払い方法・ならない支払い方法)
  • これから事業者がとるべき対策

を、国税庁の公表資料にもとづいて整理します。


結論:現金で受け取るなら「輸入許可書」の写しが必要に

  • 対象:2026年10月1日以後に行う輸出(商品を海外へ販売・貸付け)で、代金を現金などで受け取るもの
  • 必要になる書類:これまでの輸出許可書などに加えて、輸出先の国の税関などが輸入の事実を証明した書類(輸入許可書など)またはその写し
  • 対象外:取引相手本人からの銀行振込、荷為替手形、クレジットカードなど
  • 書類がなければ輸出免税は受けられず、その売上げには通常どおり消費税がかかることになります

出典:国税庁「消費税法改正のお知らせ(令和8年4月)」4ページ、国税庁「タックスアンサーNo.6551 輸出取引の免税」、消費税法第7条第2項(e-Gov法令検索)


1.なぜこの規制ができたのか

輸出免税は「還付」につながる制度

輸出する商品には消費税がかかりません(輸出免税)。一方で、その商品を仕入れたときに支払った消費税は、申告で差し引くことができます。そのため、輸出の多い事業者は、納める消費税より差し引く消費税のほうが多くなり、税金が戻ってくる(還付される)ことがよくあります。

輸出免税を受けるには、「本当に輸出した」ことを証明する書類(税関の輸出許可書など)を7年間保存する必要があります。書類がなければ、輸出取引であっても免税は受けられません。

現金取引では「誰が払ったか」を確かめられない

銀行振込なら、お金の流れが金融機関の記録に残るため、「海外の取引相手が代金を払った」ことを後から確認できます。ところが現金や、取引相手以外の人からの振込では、本当に海外の取引相手が支払ったのかを確かめる手段がありません。

この改正は輸出免税を利用した不正な還付が疑われる現金取引への対策として、要件を厳しくしたものだといえます。実際に改正後のルールをみると、

  • 取引相手本人から振込などで支払われたことが金融機関の記録で確認できる場合は、これまでどおり
  • 確認できない支払い方法の場合は、輸出先の国で実際に輸入されたことを書類で示す

という形になっています。つまり、「お金の流れ」か「モノの到着」のどちらかで、取引が本物であることを確認できるようにする仕組みだといえます。

出典:国税庁「タックスアンサーNo.6551」(輸出取引の仕入税額控除・証明書類の保存)、国税庁「消費税法基本通達7-2-24」、消費税法施行規則第5条第1項(e-Gov法令検索)


2.何が変わったのか

対象になる支払い方法・ならない支払い方法

支払い方法輸入許可書などの保存
現金(紙幣・硬貨)。代理人を通じた受け取りを含む必要
取引相手以外の人からの銀行振込必要(保証人・連帯債務者など、支払い義務がはっきりしている人からの振込は除く)
暗号資産交換業者を通さない暗号資産での受け取り必要
商品券での受け取り必要
取引相手本人からの銀行振込不要
荷為替手形による決済不要
クレジットカード不要
取引相手との債権・債務の相殺不要

注意したい3つのルール

  • 一部でも現金なら対象:代金の一部だけ現金で受け取った場合も必要です。ただし、契約で決めた手付金だけを現金で受け取り、代金の大部分は振込などで受け取る場合は、不要として差し支えないとされています。
  • 実際の受け取り方で判断:契約書では「銀行振込」となっていても、実際に現金で受け取れば必要です。
  • 判定の時期:2026年10月1日以後に行う輸出が対象です。

出典:国税庁「消費税法基本通達7-2-24・7-2-25」、国税庁「タックスアンサーNo.6551」、国税庁「消費税法改正のお知らせ(令和8年4月)」4ページ、国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式・概要編)」問22(注2)


3.保存する「輸入許可書など」とは

国税庁の告示で、次の5つが書かれた書類(または写し)と決められています。輸出先の国の税関などの行政機関が発行したものである必要があります。

  1. 税関などの行政機関の名称
  2. 輸入した日
  3. 品物の内容
  4. 品物の金額
  5. 書類を受け取った人(輸入者)の氏名・名称

輸入許可書が発行されない場合

ケース代わりに保存する書類
輸出先が自由貿易地域で、輸入許可の手続がない税関などに提出した輸入申告書の控え
輸入許可が「許可した」という通知だけ輸入申告書の控え+輸入許可済みであることを証明する書類
郵便で送り、輸出先では税関告知書だけで通関される税関告知書(写し)+日本郵便の追跡サービスの配達記録(相手に届いたことがわかるもの)

いずれも、上の5つの事項がわかるものに限られます。

出典:国税庁「令和8年国税庁告示第1号」、国税庁「消費税法基本通達7-2-26」


4.今後の対策

対策1:できるだけ「取引相手本人からの振込」に切り替える

もっとも確実なのは、追加の書類が要らない決済方法にすることです。取引相手本人名義の銀行振込、荷為替手形、クレジットカードなら、これまでどおり輸出許可書などの保存だけで済みます。

  • 振込の名義が取引相手本人かどうかを確認する(家族・知人・別会社からの振込は対象になります)
  • 契約書の支払条件を「取引相手名義の口座からの送金」と明記する

対策2:現金で受け取るなら、輸入許可書の写しを確実に入手する

輸入許可書は輸出先の国で輸入者(買い手)が受け取る書類です。売り手の手元には自然には届かないため、取引の前に買い手と取り決めておくことが重要です。

  • 契約時に「輸入許可書の写しを○日以内に提供する」ことを約束してもらう
  • 届いた書類に、告示の5項目(税関名・輸入日・品物・金額・輸入者名)がそろっているか確認する
  • どの輸出(輸出許可書)に対応する書類かがわかるように、取引ごとにまとめて保存する

※ 上の進め方は、制度の内容をふまえた実務上の工夫です。書類の提供方法について国税庁の資料に定めはありません。

対策3:書類がそろわない場合のリスクを価格に織り込む

輸入許可書などを保存できなければ、輸出免税は受けられません。その場合、売上げは通常どおり消費税のかかる売上げとして扱われることになります。現金での取引を続ける場合は、書類が入手できないリスクも考えて、価格や取引条件を検討しておきましょう。

対策4:保存期間と保存方法を確認する

  • 輸出許可書なども輸入許可書なども、7年間(課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から)保存します。
  • 保存場所は、納税地か、その取引をした事務所などの所在地です。
  • 書類は紙だけでなく、電子データ(電磁的記録)でも認められます。

免税店を営む事業者の方へ

2026年11月1日から、免税店(輸出物品販売場)はリファンド方式に変わります。免税店で売った商品をその場で海外へ発送する「直送制度」や、お店が自分で海外へ発送する場合も、代金を現金で受け取ったときは、輸入許可書にあたる書類の保存が必要です。クレジットカード決済なら不要です。

出典:国税庁「タックスアンサーNo.6551」、消費税法第7条第2項・消費税法施行規則第5条第1項(e-Gov法令検索)、国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式・概要編)」問22・問22-2


輸出事業者向けチェックリスト

  • ☐ 2026年10月1日以後の輸出で、現金や第三者からの振込で代金を受け取った取引を洗い出した
  • ☐ 取引相手本人からの振込・荷為替手形・カード決済に切り替えられる取引を検討した
  • ☐ 振込名義が取引相手本人かどうかを確認する手順をつくった
  • ☐ 現金取引を続ける相手とは、輸入許可書の写しを提供してもらう約束をした
  • ☐ 受け取った書類に5項目(税関名・輸入日・品物・金額・輸入者名)があるか確認している
  • ☐ 輸出許可書と輸入許可書を取引ごとにひもづけて、7年間保存できる体制にした
  • ☐ 書類が入手できない場合の消費税の負担を、価格や条件に反映させた

まとめ

  • 2026年10月1日から、輸出代金を現金などで受け取る場合は、輸出先の国の輸入許可書なども保存しないと輸出免税を受けられなくなりました。
  • 背景には、誰が支払ったか確認できない現金取引を利用した、輸出免税の不正な還付への対策があります。
  • 取引相手本人からの振込・荷為替手形・カード決済なら、これまでどおりです。
  • 現金取引を続けるなら、取引前に買い手と輸入許可書の写しの提供を取り決めておくことが大切です。

参考資料


本記事は2026年10月14日時点の国税庁の公表資料等にもとづく一般的な解説です。個別の取引の取扱いについては、税理士または所轄の税務署にご相談ください。

この記事の監修者

岩谷 敦史(いわたに あつし)

税理士(登録番号 143022)/宅地建物取引士
岩谷敦史税理士事務所 代表(神奈川県川崎市)

中国語スタッフ7名とともに、中国人経営者・中華系企業の税務顧問、輸出の消費税還付申告(年間120件以上)、非居住者の不動産申告・納税管理人を中心にサポートしています。マネーフォワード クラウド公認メンバー、freee認定アドバイザー。

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