2026年10月13日時点の情報です
2026年(令和8年)11月1日から、外国人旅行者向けの消費税免税制度が「リファンド方式」に変わります。現行制度との併用期間はなく、11月1日以降の販売はすべて新しいルールになります。
高級時計やブランドバッグのような高額品を扱うお店にとって、今回の改正でとくに重要なのが次の2点です。
- 単価100万円(税抜)以上の商品は、シリアル番号などの「商品を特定する情報」の登録が必須になります。
- 登録に不備があると、お客様が空港で税関の確認を受けられず、消費税の返金を受けられないおそれがあります。
この記事では、時計・バッグを扱うお店が押さえておきたいポイントを、国税庁のQ&Aにもとづいて具体的に解説します。
まず確認:リファンド方式の基本
- お店は外国人旅行者に税込価格で販売する
- お客様は購入日から90日以内の出国時に、空港などの税関で持ち出しの確認を受ける
- お店は、国税庁のシステムから「税関で確認が取れた」という情報(税関確認情報)を受け取って保存する
- お店からお客様へ消費税相当額を返金する
つまり、税関で「この商品が国外に持ち出される」と確認できなければ、免税は成立しません。高額品ほど、税関で「確かにその商品だ」と確認できるかどうかが重要になります。
出典:国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式・概要編)」 問1
ポイント1:100万円以上の時計・バッグは「商品情報詳細」の登録が必須
単価(税抜)が100万円以上の商品を販売したときは、国税庁に送る購入記録情報に「免税対象物品を特定するに足りる事項」(システム上の「商品情報詳細」欄)を必ず入力します。
入力するのは、商品に合わせて次の情報を組み合わせたものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 具体的な名称 | 「時計」ではなく「腕時計」、「宝飾品」ではなく「ダイヤの指輪」など |
| ブランド名 | メーカーやブランドの名称 |
| 型番号・モデル名 | モデルを特定する名称や型番(シリアル番号とは別に入力) |
| 形状・色・素材など | 色、素材、サイズ、重量などの外見の特徴 |
| 鑑定書・保証書の有無 | 鑑定書・鑑別書・保証書が付いている場合はその旨 |
| シリアル番号 | 腕時計のように個別の番号が付いている商品は、シリアル番号も必須(専用の欄に入力) |
入力例(国税庁Q&Aの設定例をもとに作成)
| 商品 | 商品情報詳細 | シリアル番号 |
|---|---|---|
| 腕時計 | ブランド名○○、型番AA12345、黒色系 | X9999999 |
| バッグ | ブランド名○○、モデル名○○、赤色系、牛革、シリアル番号は背面側の内ポケット | 123456789 |
💡 バッグのシリアル番号は「場所」も書く
シリアル番号が外から見えにくい場所にある場合は、できるだけその場所(ICタグの場合はその旨と場所)も入力します。税関職員がすぐに確認できるようにするためです。
❌ こんな入力はNG
| 商品 | 商品情報詳細 | シリアル番号 |
|---|---|---|
| 腕時計 | 黒色 | なし |
| 指輪 | ブランド名△△△ | なし |
これでは商品を特定できません。シリアル番号があるのに入力していない場合も、税関で同じ商品かどうか確認できないため、お客様が確認を受けられないおそれがあります。
入力のときの細かな注意
- シリアル番号とロット番号は別物です。 シリアル番号は1つの商品だけに付いた固有の番号です。同じ時期に製造された商品にまとめて付くロット(製造)番号はシリアル番号にあたらないので、「品名」欄か「商品情報詳細」欄に入力します。
- 文字数に制限があります。 「商品情報詳細」欄は80文字まで、「シリアルナンバー」欄は半角英数字20文字までです。
- ブランド名・型番などを「品名」欄にすでに入力している場合は、「商品情報詳細」欄に「品名欄に設定済み」と入力してもかまいません(シリアル番号は除きます)。
出典:国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式・概要編)」 問13
ポイント2:同じモデルを複数本売ったら「1本ずつ」登録
同じモデルの時計を2本販売した場合、普段なら「品名A、数量2」とまとめて登録するかもしれません。
しかし、単価100万円以上の同じ商品(シリアル番号が異なるもの)を複数販売したときは、まとめて登録できません。 税関では1点ずつ持ち出しを確認するため、1本ずつ、商品情報詳細とシリアル番号を登録します。
出典:国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式・概要編)」 問13-2
ポイント3:100万円未満でも「品名」はくわしく
単価100万円未満の商品では、商品情報詳細の入力は任意です。
ただし、金額にかかわらず、「品名」などから税関が商品を特定できない場合は、お客様が確認を受けられないおそれがあります。 また、税関で商品が何なのか判断できないと、お店に問い合わせが来る可能性もあります。
80万円のブランドバッグでも「バッグ」とだけ登録するのではなく、ブランド名やモデル名がわかるように入力しておくと、お客様が空港でスムーズに手続できます。
出典:国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式・概要編)」 問14
ポイント4:鑑定書・保証書は「出国時に持っていく」よう案内
鑑定書・鑑別書を確認すれば商品の特徴がわかる場合、商品情報詳細に「鑑定書あり」と入力すれば、形や色などの特徴の入力を省略できます。
ただしその場合、出国時の手続で鑑定書などの提示が必要になることを、お客様に説明しなければなりません。
お客様が鑑定書を持っておらず、登録した情報だけでは同じ商品か確認できない場合、税関の確認を受けられず、返金も受けられません。
出典:国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式・概要編)」 問13(注4)
ポイント5:1回のお会計の商品が1つでも欠けると、全部が対象外に
税関の確認は「購入記録情報」の単位で行われます。購入記録情報の単位とは、基本的には1回のお会計(1枚の領収書・レシート)のことです。
そのため、同じお会計に含まれる商品のうち1つでも出国時に持っていないと、そのお会計の商品はすべて確認を受けられず、免税になりません。
たとえば、時計とバッグとアクセサリーを1回のお会計で購入し、アクセサリーだけを先に人に渡してしまった場合、時計とバッグも含めて全部が対象外になります。販売時の説明でしっかり伝えておきましょう。
出典:国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式・概要編)」 問20
ポイント6:まとめ買い・業者買いは「本人が持って帰れる量」まで
「同じモデルを10本ほしい」といった、事業用・転売用と思われる購入はどうなるのでしょうか。
免税の対象外とされる物品(金・白金の地金、金貨・白金貨、非課税の物品)でなければ、用途を問わず免税の対象になります。高級時計やブランドバッグは対象です。
ただし、出国時にお客様本人がすべての商品を持っていなければ、税関の確認は受けられません。そのため、免税で購入できるのは、お客様が出国時に自分で持って出られる数量に限られます。
本人が持って帰れない量を販売したい場合は、次の「海外発送」の方法を検討します。
出典:国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式)[詳細編]」 問6・問7
海外へ送ってほしいと頼まれたら?「直送」と「自社での輸出」
「帰国先に送ってほしい」というご依頼は、高額品ではよくあります。11月1日からは、この場合の扱いが次のように整理されます。
✅ 方法1:直送(お店で運送契約をして、その場で引き渡す)
お客様が、お店で国際第二種貨物利用運送事業者(国際貨物の運送を手配する、国土交通大臣の許可を受けた事業者)との運送契約を結び、その場で商品を引き渡す方法です。
- 輸出免税(消費税法第7条)として扱われるため、最初から税抜価格で販売できます。
- 免税販売手続(下限5,000円の判定を含む)や購入記録情報の送信は不要です。
- お客様は出国時に税関の確認を受ける必要がありません。
- お客様が外国人旅行者でなくても(日本の居住者でも)利用できます。
- お店は運送契約書などを7年間保存します。運送契約書などには、次の事項が書かれている必要があります。
・顧客の氏名・名称
・運送契約を結んだ年月日
・品名と、品名ごとの数量・価額
・仕向地(送り先の国・地域)
・国際第二種貨物利用運送事業者の氏名・名称と住所など
出典:国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式・概要編)」 問22
✅ 方法2:お店が自分で海外に輸出する
直送の方法によらず、お客様の依頼でお店自身が指定の場所(国外)へ商品を輸出する場合も、輸出免税の対象になります。保存が必要な書類は送り方によって変わります。
| 送り方 | 保存する書類 |
|---|---|
| 輸出許可を受ける貨物 | 輸出許可書(税関長が証明した書類) |
| 価額20万円超の郵便物 | 輸出許可書(税関長が証明した書類) |
| 価額20万円以下の小包郵便物・EMS | 日本郵便から受け取った引受けを証する書類と発送伝票などの控え |
出典:国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式・概要編)」 問22-2
⚠️ 現金で代金を受け取るときは要注意
直送でも自社での輸出でも、代金を現金(または、相手本人からの支払いであることが明らかでない方法)で受け取った場合は、上の書類に加えて、送り先の国での輸入許可書にあたる書類も保存しなければ、輸出免税を受けられません。
クレジットカードなど、それ以外の方法で決済した場合は、この書類は不要です。高額品の現金販売で海外発送をする場合は、とくに気をつけてください。
出典:国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式・概要編)」 問22(注2)・問22-2(注)
❌ お客様が自分で郵送する「別送」は対象外
免税で購入した商品を、お客様が出国前に自分でEMSなどで国外に送る「別送」の取扱いは、すでに令和7年3月31日で廃止されています。
11月1日以降に購入した商品を別送した場合、お店は税関確認情報を受け取れないため、お客様は返金を受けられません。海外に送りたいお客様には、上の「直送」か「お店からの輸出」をご案内しましょう。
出典:国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式・概要編)」 問23
オーダーメイド・取り寄せ品の場合
免税販売手続は、お客様に商品を引き渡すときに行います。注文を受けて後日来店時に引き渡す場合は、その引渡しのときに手続をします。
帰国後に自宅へ発送する形で引き渡す場合は、免税店の制度による免税は受けられません。 この場合は、お店から輸出する方法(輸出免税)や直送を利用します。
出典:国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式・概要編)」 問11
百貨店のテナントや免税手続カウンターを利用しているお店へ
商品を売る売場と免税手続をする場所(免税手続カウンター)が分かれている場合は、売場からカウンターへ、商品情報詳細やシリアル番号を正しく伝える仕組みを作っておく必要があります。
百貨店のテナントのように、売場と免税カウンターが離れている場合も同じです。カウンター側では商品の現物やシリアル番号がわからないことが多いので、伝え漏れのないよう事前に運用を決めておきましょう。
出典:国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式・概要編)」 問13
高級時計・ブランドバッグ店のチェックリスト
- ☐ 免税販売手続の電子化の届出は済んでいるか(未提出の免税店は10月31日で許可が失効)
- ☐ レジ・免税システムで、商品情報詳細(80文字)とシリアル番号(20文字)を入力できるか
- ☐ 時計・バッグごとに、シリアル番号の位置と確認方法をスタッフが把握しているか
- ☐ 同じモデルを複数本売るとき、1本ずつ登録する運用になっているか
- ☐ 100万円未満の商品も、品名にブランド名・モデル名を入れているか
- ☐ 「鑑定書・保証書を出国時に持参する」「1回のお会計の商品はすべて持って出国する」「手荷物を預ける前に税関へ」をお客様に説明する文書・手順があるか
- ☐ 海外発送の依頼を受けたときに、直送かお店からの輸出かを選べるか(運送契約書・輸出許可書などを7年間保存する体制、現金決済のときの輸入許可書相当の書類の取り扱い)
- ☐ 売場と免税カウンターが分かれている場合、シリアル番号などを正しく伝える仕組みがあるか
出典:国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式・概要編)」 問10
よくある質問
Q. 中古(ユーズド)の時計も同じルールですか?
A. 国税庁のQ&Aには、中古品だけの特別な取扱いは書かれていません。登録が必須かどうかは「販売した商品の単価(税抜)が100万円以上かどうか」で決まります。
Q. シリアル番号が確認できない時計はどうすればよいですか?
A. シリアル番号の登録が求められるのは、シリアル番号が付いている商品です。付いていない商品は、名称・ブランド名・型番・形や色などの特徴・鑑定書の有無などを組み合わせて、商品を特定できるように入力します。
Q. 時計とバッグを別々のお会計にしたほうがよいですか?
A. 国税庁のQ&Aには、お会計を分けるべきかどうかの記載はありません。ルールとしては「1回のお会計の商品が1つでも欠けると、そのお会計の商品はすべて対象外」なので、販売時にお客様へしっかり説明することが大切です。
Q. 11月1日以降に出国するお客様に、10月中に販売した時計はどうなりますか?
A. 判断の基準は出国日ではなく販売日です。10月31日までに販売したものは、今の制度で処理します。
出典:国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式・概要編)」 問8・問13・問20
まとめ
- 2026年11月1日の販売から、免税制度は「税込で販売→税関確認後に返金」のリファンド方式に変わります。
- 単価100万円以上の時計・バッグは、ブランド名・型番・色・素材などとシリアル番号の登録が必須です。不備があると、お客様が返金を受けられないおそれがあります。
- 同じモデルの複数販売は1本ずつ登録し、鑑定書の持参や「全部を持って出国」をお客様に案内しましょう。
- 海外発送は「直送」か「お店からの輸出」で対応します。現金決済のときは、送り先の国の輸入許可書にあたる書類も必要です。
参考資料
- 国税庁「輸出物品販売場制度のリファンド方式への見直し」(特設ページ)
- 国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式・概要編)」令和8年4月改訂
- 国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式)[詳細編]」令和8年7月
- 消費税法 第7条・第8条(e-Gov法令検索)
本記事は2026年10月13日時点の国税庁の公表資料にもとづく一般的な解説です。個別の取引の取扱いについては、税理士または所轄の税務署にご相談ください。
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