消費税還付を受ける中国人経営者の税務調査体験 -中国語対応税理士の立場から

本記事では、中国人経営者が日本で税務調査(税务调查)に臨む際に直面する課題やポイントについて、消費税還付に関する輸出を含む実体験を元に解説します。
税務署の「敵」というイメージを払拭し、正しい対策と協力的な姿勢で臨むことの重要性を伝えたいと思います。

この記事を読んでほしい人
この記事は、
日本で消費税還付を目的とする輸出業務を行う中国人経営者や、
その顧問税理士に向けた情報提供を目的としています。
税務署の調査に備えた実務的な対応方法や、税務署とのスムーズな関係構築に関心のある方に役立つ内容です。

税務調査前の準備

税務調査に備えて、中国人経営者の社長と事前打ち合わせを行いました。
やはり、社長さんは今まで税務調査を受けたことがあっても、毎回緊張するようです。
ざっと普段から整理してある過去の帳簿を見て、何か特徴的なことがなかったかなと確認する作業になります。
そして、時が経つと忘れているところもあるので、私が違和感を持ったところを社長さんに確認して、その疑問点をあらかじめ探していく形になります。
(模擬試験のように、私が指摘したところが当たれば、税務調査の方向性が分かり、スムーズに調査が進みます。
当たらなかったときは、社長さんも答えが覚えていなくて調査後に調べることが多くてちょっと苦労します。
具体的な内容としては過去の帳簿や消費税申告内容を確認し、特に輸出に関連する領収書や請求書、通帳の記録における不審点を洗い出します。
事前の模擬確認で疑問点が見つかれば、スムーズな進行が期待できます。
ここの確度が上がれば、社長さんの負担を軽減できるのですが、まだまだ勉強が必要です。

1日目の税務調査の流れ

税務調査初日の午前中、税務署の担当者は中国人経営者の社長の経歴や事業内容を確認しました。
この「ヒアリング」は雑談のように進行しますが、横で聞いていると、
当たり前の質問だなと思うことと、
何のために質問しているのかなと思うことがあります。
後者の場合、後の内容調査の際にストーリー作りとして聞いていることが多いような気がします。
午後は実地調査が行われました。
社長は忙しかったので、退席され私と税務調査官2名が残って進みます
特に消費税還付を伴う輸出取引に関しては「本当に輸出を行っているのか」について厳密に確認されます。
税務調査官が請求書や領収書に付箋が貼っていき、社長が具体的に説明を行い、分からない点は後日調査する流れになります。

今回の場合は高額商品の輸出による消費税還付のため、「本当に商品を仕入れて売却しているのか」
という点を強く調べられることとなり、付箋が貼り終わった後の社長に戻っていただきその点を質問されました。
分かっている部分は答えていただき、分からない・覚えていない部分については後で調べますという形で進んでいきます。
(今回は事前の打ち合わせの内容がほぼ当たっていたのでスムーズに回答していただきました。)

【関連記事】
消費税還付の際に必要な輸出を証明する書類について

そして、書類上の確認は疑いがない状態でしたので、本当に売買しているところを確認したいということになりました。

2日目の税務調査の詳細

2日目は税務調査官が仕入をして輸出をする場面を確認したいということで
商品が仕入先から届いて、梱包する作業を調査官の方と一緒に確認する作業を行いました。
それぞれの作業を写真を撮って確認され、実地調査は完了しました。
この過程を通じて、書類上の取引が実態に即しているかを証明することと実際に商品を扱っていることを証明するために必要だったと思います。
この実地確認は、特に高額な商品の消費税還付において重要な工程です。

調査後の対応

社長さんは実地調査が終わり、ほっとされるのですが、
実地調査が終了した後も、税理士として税務署からの追加資料や質問に対応します。
税理士としてはここからが本番です。
疑問点などを丁寧に回答し、またわからない場合は社長さんに私から問い合わせる形をとっていきます。
問題がなければ最終的に「是認」通知が届き、税務調査が終了します。この対応がスムーズであれば、会社側にとっても税務署との信頼関係が強化されます。

まとめ

いかがだったでしょうか。
今回はすんなり終わった税務調査の例を紹介しました。
消費税還付に関連する税務調査において、
会社側が、「隠そう」・「逃げる」、「争おう」とすると
税務署はより強硬に調べようとします。
しかし今回は、税務署は会社をひどく疑って調査に入ってきたのですが、
会社側が、「適正」、「協力」、「信頼」して税務署に説明することによって
税務署側の人も、落ち着いて調べて頂いています。
会社側が正しいことをしているのに、それでも税務署側が疑ってくるようなことがあれば
それは戦うべきですが、
きちんと対応をしているとそうなることはなく
スムーズに税務調査が進み、終結に向かって行くものです。
「対立」ではなく「協力」することが税務調査のポイントと言えるかもしれません。

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