中国企業へ支払う著作権の使用料について

グローバル化がかつてないほど進展している昨今において、外国の企業と取引をする機会が増えている企業も多いのではないでしょうか。
外国の企業と取引をするにあたっては、特に消費税と源泉所得税の取り扱いについて留意する必要があります。
この記事では、中国の企業へ著作権の使用料を支払う場合における消費税と源泉所得税の取り扱いについて、具体的なご相談を例に詳しく解説します。

ご相談事例

当社は出版社です。
このたび、中国の出版社(日本に支店などはありません)が著作権(版権)を有する漫画を翻訳して日本で販売することになったため、中国の出版社に対して著作権の使用料を支払います。
(1)使用料は100万円ですが、これに日本の消費税を乗せて110万円を支払うべきでしょうか。
(2)外国の企業へ著作権の使用料を支払う場合は源泉徴収が必要だと聞いたことがありますが、今回の場合は源泉徴収が必要でしょうか。必要であれば何円源泉徴収すべきかと、当社がどのような手続きをすべきか教えてください。

ご相談への回答

まず、日本の消費税を乗せて支払う必要はありません。
次に、支払い時に源泉徴収が必要です。ご相談のケースは日中租税条約に規定される税率の適用を受けることができますので、100万円の10%を源泉徴収して、残った90万円を中国の出版社に送金します。源泉徴収した10万円は、源泉徴収をした翌月の10日までに貴社の所轄税務署へ納付する必要があります。
なお、租税条約に規定される税率の適用を受けるにあたっては、中国の出版社へ支払いを行う前日までに「租税条約に関する届出書」を貴社の所轄税務署へ提出する必要があります。

回答の背景

消費税について

消費税の課税の対象は「国内において事業者が行った資産の譲渡等」であるため(消費税法4条)、中国の出版社による著作権の貸付けが「国内において」に該当するかが問題となります。
この点、著作権の貸付けが「国内において」行われたか否かは著作権の貸付けを行う者の住所地で判定すべきとされているところ(消費税法施行令6条1項7号)、著作権の貸付けを行う者の住所地は中国ですから、中国の出版社による著作権の貸付けは「国内において」に該当しません。以上より、本件は消費税の課税の対象となりませんから、日本の消費税を乗せて支払いを行う必要はありません(消費税は不課税です)。

源泉所得税について

日本に住所を有しない者(非居住者)に対して一定の支払いをする者は、支払いの際に所得税を源泉徴収するとともに、その源泉徴収した所得税を翌月10日までに税務署へ納付する必要があります(所得税法212条)。
著作権の使用料の支払いも「一定の支払い」に該当するため、非居住者へ著作権の使用料を支払う場合は源泉徴収が必要です(所得税法161条1項11号ロ)。
著作権の使用料にかかる源泉徴収税率は原則として20.42%ですが、租税条約にこれより低い税率が規定されている場合はその低い税率が適用されます。日中租税条約では著作権の使用料にかかる税率は10%と規定されていますので(日中租税条約12条)、貴社が源泉徴収すべき金額は100万円の10%である10万円となります。
なお、租税条約の規定の適用を受ける場合は、非居住者への支払いを行う前日までに「租税条約に関する届出書」を納税地の所轄税務署長へ提出する必要があります(租税条約の実施に伴う特例法の施行に関する省令2条)。著作権の使用料の場合は、「租税条約に関する届出書」の様式3を提出します。様式3は国税庁のホームページから入手することができます。

(国税庁ホームページ)
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joyaku/annai/1648_41.htm

まとめ

中国の企業へ著作権の使用料を支払う場合における消費税と源泉所得税の取り扱いについて解説しました。源泉所得税率は使用料の支払いを行う国ごとに異なるので、日本と相手先国との租税条約を確認しましょう。

PREV
現金・小口現金の管理を廃止する3個の利点
NEXT
受注制作のソフトウェアの収益認識基準と 海外子会社(中国・ベトナム)に開発を受注した際の留意点