従業員10人未満の会社限定|住民税特別徴収の納期と特例

住民税特別徴収企業従業員の給与から住民税を徴収して納付する制度です。

1月に市区町村に給与支払報告書を提出、5月に特別徴収税額が通知され、6月から翌年5月まで住民税を給与天引きして納付するという1年の流れになっています。

この記事では、従業員10人未満の会社向け住民税特別徴収納期特例、手順やポイントについて解説します。

住民税の特別徴収とは?

住民税は、1月1日現在に従業員(納税義務者)の居住する市区町村が、課税、賦課徴収を行っている税金です。
前年の所得金額に応じて課税される「所得割」、定額で課税される「均等割」を計算して出します。
住民税の特別徴収は従業員が納付すべき住民税を会社が給与から控除し、納付する制度です。

個人住民税の税額計算は市区町村が行いますので、所得税のように事業主が税額を計算したり、年末調整をする手間はありません。

2か所以上の事業所に勤務している従業員は、主たる給与の支払を受けている勤務先で特別徴収を行います。

パートやアルバイトの従業員も前年中に給与の支払いを受けており、当該年度初日(4月1日)に給与の支払を受けている方は特別徴収の対象となります。

注意)給与所得者の個人住民税は原則として特別徴収の方法により徴収する事が法令の決まりです。そのため、従業員の希望で普通徴収を選択することはできません。

特別徴収の事務手順と手続きについて

【住民税特別徴収・納付の流れ】について説明します。

1月:市区町村に給与支払報告書を提出

毎年1月末までに給与支払報告書を提出すると、市区町村において個人住民税の税額を計算される。

5月:特別徴収税額が通知される

事業主に対して、従業員が1月1日現在に居住する市区町村から毎年5月31日までに特別徴収税額決定通知書が送付される。従業員用の通知書も一緒に送られてくるので従業員へも配布します。

6月から翌年5月まで:徴収すべき住民税月割税額を従業員の給与から天引きする。

翌月の10日までに金融機関、ゆうちょ銀行から納付する。

※一か所にまとめて収める事ができないので、手間と時間がかかります。

特別徴収ををせず普通徴収になるケース

普通徴収になるケースは大きく分けて2つあります。

①下記の4点のケース。【普A~普F】に該当するときは、普通徴収にすることができます。その場合は、給与支払報告書の提出時に普通徴収切替理由書も提出します。

普A)事業所の総従業員数が2人以下の場合
(他の市区町村を含む事業所全体の受給者の人数で、以下の普B~普Fの理由に該当して普通徴収とする対象者を除いた従業員数)

普B)他の事業所で特別徴収を適用されている場合(乙欄適用者

普C)給与が少なく個人住民税を特別徴収しきれない場合
・収入が今年激減した場合
・不動産の売買をしていたのを特別徴収したら全然足らなくなった時

普D)給与の支払が不定期な場合(例:給与の支払が毎月ではない)

普E)事業専従者→今回は説明を省略

普F)退職者又は5月末日までの退職予定者
(休職等により4月1日現在で給与の支払を受けていない方を含みます。)

 

②自営業者やフリーランス・給与所得者以外は区市町村から送付される納税通知書で、年4回(6月・8月・10月・翌年1月)に分けて本人が納めるケース

 

【補足:普通徴収切替理由書って何?】

給与支払報告書を提出する際、特別徴収に該当しない従業員がいる場合は、「個人住民税の普通徴収への切替理由書」を提出することにより、普通徴収にできます。 提出がない場合は、原則通り特別徴収となります。
それぞれの市区町村にで用紙が用意されており、インターネットでも入手可能。
記入方法は簡単です。

 

【補足:普通徴収への切り替え はいつまでにする?】

新年度に普通徴収へ切り替える異動届出書を提出する(徴収済月を6月分から5月分までと記載)
翌年5月までの未徴収税額は、本人が納付する「普通徴収」へ切替します。

普F)退職者又は5月末日までの退職予定者の手続き方法

退職者の住民税特別徴収について

転職先が決まっているかどうかで住民税の納付方法が異なりますので、それぞれのケースで解説いたします。

退職時にすでに転職先が決まっている
「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を発行する。

転職先が決まっていない場合
退職日によって住民税の納付方法が変わります。

・1月1日~4月30日に退職した場合(退職日が4月30日まで)
退職月から5月分までの住民税は退職日以降5月31日までに支給する給与から一括徴収する。

・5月1日~5月31日に退職した場合
5月分の住民税のみが残っている状態のため、最後の給与から天引きする。

6月1日~12月31日に退職した場合
翌年5月までの住民税を一括徴収するか、普通徴収にするかを退職者本人に選択させる。

特別徴収の納期の特例について

従業員が少ない事業所でも特別徴収をしなければいけませんが、小さな会社では毎月納めるための事務処理、納付等が業務負担となるため納期の特例を利用できます。

特別徴収する従業員が常時3人~10人未満の会社に限り、市町村長に対して申請すれば、年12回の納期を年2回の納付に変更することができます。

毎月の給与からの天引きは「特別徴収税額決定通知書」記載の通り行います。給与から天引きした住民税は一旦預かり、年2回に分け納付します。

1回目納付:12月10日(6月~11月分)
2回目納付:  6月10日(12月~5月分)

特別徴収税額の納期の特例 メリット・デメリット

【メリット】
毎月従業員の給与から天引きした住民税を、翌月の10日までに従業員が居住する市区町村へそれぞれ納付するということをしなくてよい事です。年2回(6か月ごと)の納付で良いのはかなりの負担軽減になります。

【デメリット】
6ヶ月預かっていた住民税を一度に払うので資金繰りがおかしくなります。

特別徴収税額の納期の特例・申請、留意点

【申請の方法】

特別徴収税額の納期の特例に関する承認申請書」に必要事項を記入の上、会社所在地の管轄先へ申請する。(郵送または持参)
審査があり結果が通知される。

※納期の特例に関する各種様式はそれぞれの市区町村であり、インターネットでダウンロードできるようになっています。

【不承認要件】
不承認となる要件は次のとおりです。

・給与の支払いを受ける従業員等が常時10人以上と認められるとき
・税金の滞納があるとき
・納期の特例の取消を受けて1年を経過していないとき

【留意事項】
・特例の適用を受けようとする月末までに申請書を提出する
・従業員数が常時10人以上となった場合
・滞納が発生した場合、承認が取り消しとなることがあるので注意

従業員10人未満の会社限定|住民税特別徴収の納期と特例まとめ

住民税を特別徴収の方法により徴収することは会社の義務となっています。
しかし小規模な会社にとっては、住民税を毎月納付する業務負担は大きいです。

従業員3~10人未満の会社の場合は原則毎月納めなければならない住民税を年2回(12月10日と翌年6月10日が納期限)の納付に変更することができます。

納期の特例という制度をぜひ活用してください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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