2026年10月17日時点の情報です
ブランド品や時計、化粧品などを買い取って販売・輸出している会社にとって、2024年(令和6年)4月の消費税法改正は見過ごせない改正です。「免税店で消費税なしで買われた品物」だと知りながら仕入れると、その仕入れにかかった消費税を差し引けなくなったからです。
輸出をしている会社は、仕入れで払った消費税が戻ってくる(還付される)ことが多いため、この制限にかかると、還付されるはずの消費税が戻ってこないことになります。
この記事では、
- どんな制度なのか
- 国税庁が「免税購入品かもしれない」と注意を促している場面
- 仕入れのときにとるべき対応
- 買付代行・輸出代行をしている会社が特に気をつけたい点
- 2026年11月の免税店制度の見直しとの関係
を、国税庁の公表資料と法令をもとに整理します。
結論:「疑わしい品物は、確認して記録する。それでも怪しければ買わない」
- 2024年4月1日以後の仕入れから、免税店で消費税が免除された品物(免税購入品)と知りながら仕入れた場合、その仕入れの消費税は差し引けません(仕入税額控除ができません)。
- 古物商が帳簿だけで控除できる特例(古物商等特例)を使っている場合でも、同じく控除できません。
- 国税庁は、非居住者からの買取り、免税用の包装、同じ品物の大量・定期的な持込み、SNSでの「買い子」募集などを、免税購入品が疑われる場面として例示しています。
- 対応として国税庁が示しているのは、本人確認・調達先の確認と記録・現金でなく本人口座への振込み・場合によっては仕入れを見送ることです。
- この制限は、2026年11月1日の免税店制度の見直し(リファンド方式)の後も、同じ内容で続きます。
出典:国税庁「免税購入品と知りながら行った課税仕入れに係る仕入税額控除の制限」(令和6年5月・令和7年5月改訂)、消費税法第30条第12項(e-Gov法令検索)
1.どんな制度?
そもそも「免税購入品」とは
デパートやドラッグストアなどの免税店(正式には「輸出物品販売場」)では、外国人旅行者などが国外へ持ち出す品物を、消費税なしで買うことができます。この制度で消費税が免除された品物を、国税庁は「免税購入品」と呼んでいます。
免税購入品は「国外へ持ち出すこと」が前提なので、本来は日本国内で転売されることはありません。ところが実際には、免税で買った品物を国内の買取店などに売る「横流し」が相次いでいました。
出典:国税庁「消費税のあらまし 4 免税される輸出取引は?」、国税庁「不正な免税110番 ~STOP!免税店制度の不正利用~」
2024年4月からのルール
消費税は、売上げで預かった消費税から、仕入れで払った消費税を差し引いて納めます。この「差し引く」ことを仕入税額控除といいます。
2024年4月の改正で、仕入れの時点で、その品物が免税購入品だと知っていた場合は、その仕入れについて仕入税額控除ができなくなりました(消費税法第30条第12項)。2024年4月1日以後に行う仕入れから適用されています。
たとえば、免税購入品と知りながら腕時計を110万円(税込)で買い取った場合、その中の消費税分(10万円)は差し引けません。輸出して還付を受ける会社なら、その分だけ還付額が減ることになります。
(金額は説明のための例です)
なお、同じ条文では、消費税を納めずに輸入された品物(いわゆる密輸品)だと知りながら仕入れた場合も、同じように控除できないとされています。
出典:国税庁「令和6年4月 消費税法等改正のお知らせ」Ⅵ、消費税法第30条第12項(e-Gov法令検索)
古物商等特例を使っていても同じ
インボイス制度では、古物商や質屋がインボイスを発行できない一般の人から品物を買い取る場合に、帳簿の記載だけで仕入税額控除ができる特例(古物商等特例)があります。
しかし、免税購入品と知りながら行った仕入れは、この特例を使うかどうかに関係なく、控除できません。「インボイスがなくても控除できる取引だから大丈夫」とはならない点に注意が必要です。
出典:国税庁「インボイスQ&A 問106(古物商等の古物の買取り等)」注2、国税庁「免税購入品と知りながら行った課税仕入れに係る仕入税額控除の制限」(注)
2.「免税購入品かもしれない」と疑うべき場面
国税庁は、次のような場合は免税購入品の可能性があるとして、注意を呼びかけています(要旨)。
古物商などとして買い取る場面
- 本人確認書類などから、日本に住んでいない人(非居住者)からの買取りだとわかる
- 提示された本人確認書類が偽造ではないかと疑われる
- 品物に免税用の包装がされている(または、されていた跡がある)
- 同じ種類の品物を、大量に、または定期的に買い取ってほしいと言われる
- 本人確認書類を出した本人ではなく、付き添いの人が主に話を進めるなど、持ち込んだ人が買った(持っていた)品物ではなさそうだ
- 高級品の買取りで、持ち込んだ人の様子から、本当の持ち主か疑わしい
卸売業者などから仕入れる場面
- 仕入先とのやり取りが主にSNSで、その相手が同じアカウント名で、免税品を買うアルバイト(いわゆる「買い子」)を募集しているなど、免税店制度の不正利用が疑われる
買取店だけでなく、業者から仕入れる会社も対象になることがわかります。
出典:国税庁「免税購入品と知りながら行った課税仕入れに係る仕入税額控除の制限」2
3.疑わしいときにとるべき対応
国税庁は、疑わしい品物を仕入れるときの対応として、次のような例を挙げています。
- 本人確認を確実に行う
- 品物の調達先など取引の内容を仕入先に確認し、その記録を残す
- 現金で買い取らず、本人の口座へ振り込む
- 場合によっては、仕入れそのものを見送る
また、免税店制度を悪用している人物・店舗の情報は、国税庁の「不正な免税110番」で受け付けています。受け付ける情報には、免税購入品を買い取る人・店舗の情報も含まれています。買取業界も、国税当局の監視の対象になっているということです。
出典:国税庁「免税購入品と知りながら行った課税仕入れに係る仕入税額控除の制限」3、国税庁「不正な免税110番」
実務での記録の残し方(筆者の整理)
条文上、控除できなくなるのは「免税購入品だと知っていた」場合です。国税庁の資料も「知りながら仕入れていたと認められた場合」と書いています。税務調査では、仕入れのときの状況から「知っていたはずだ」と見られないかが問題になると考えられます。
そのため、以下は資料に直接書かれたものではなく筆者が実務の観点から整理したものですが、次のような記録を残しておくと、「きちんと確認した」ことを説明しやすくなります。
- 本人確認書類の写しと、在留資格・住所など確認した項目のメモ
- 品物の入手経路(いつ・どこで買ったか)を聞き取った内容と、レシート・保証書などの有無
- 包装や付属品の状態(写真を残すと説明しやすい)
- 同じ人・同じ業者からの持込みの頻度と数量の一覧
- 支払いを振込みにした記録(振込先の名義が本人・仕入先と一致しているか)
- 確認の結果、仕入れを見送った取引の記録(社内のルールが機能していることの証拠になります)
4.買付代行・輸出代行をしている会社が特に気をつけたい点
海外の顧客から注文を受けて、日本国内で品物を買い付け、海外へ送る会社(いわゆる代購業者)は、免税購入品と関わる場面が多く、ほかにも注意点があります。
① 免税購入品は、国内で売り買いしてはいけない(現行制度)
現行の消費税法では、免税店で免税で買われた品物は、国内で譲り渡したり、譲り受けたりしてはいけないとされています(税務署長の承認を受けた場合を除きます)。承認なしに売り買いされたときは、売った人から、免除された消費税に相当する額が徴収されます。そして、買った人(譲り受けた人)も、売った人と連帯して納める義務を負います。
つまり、免税購入品を買い取ると、仕入税額控除ができないだけでなく、免除されていた消費税そのものを負担させられるおそれもあるということです。
なお、2026年11月1日からのリファンド方式では、購入者が出国するときに税関で持ち出しが確認されてはじめて免税になります。国内で横流しされた品物は、そもそも免税にならない(消費税込みの販売のまま)仕組みになるため、改正後の第8条には、この「国内での売り買いの禁止」にあたる規定は置かれていません。
それでも、当面は注意が必要です
- リファンド方式は、出国日ではなく免税店での販売日が2026年11月1日以後のものから適用されます。10月31日までに今の制度で免税で買われた品物は、11月以降も中古市場に出回る可能性があります。
- 免税購入品と知りながら行った仕入れの控除制限(第30条第12項)は、改正後も同じ文言で残ります。
- リファンド方式でも、税関の確認を受けた購入者は、その品物を遅滞なく輸出しなければならず、輸出されなかったときは購入者から消費税が徴収されます。税関の確認を受けた後に国内に残される品物がなくなるわけではありません。
制度が切り替わった直後は、「11月からはもう関係ない」と考えず、これまでどおり入手経路を確認する姿勢が大切です。
出典:消費税法第8条第4項~第6項(2026年10月1日施行版)、第8条第1項・第5項・第6項、第30条第12項(2026年11月1日施行版・未施行)(e-Gov法令検索)、国税庁「輸出物品販売場制度に関するQ&A(リファンド方式・概要編)」(令和8年4月改訂)問8(リファンド方式特設ページに掲載)
② 事業用・販売用の購入は、そもそも免税にならない(現行制度)
免税店で免税になるのは「通常、生活に使う品物」です。事業用や販売用として買うことが明らかな品物や、金・白金の地金は、免税の対象から外されています。転売目的の大量購入は、本来、免税で買えるものではありません。
出典:国税庁「消費税のあらまし 4 免税される輸出取引は?」注7
③ 「仕入れたのは自社ではない」とされることもある
免税購入品とは別の論点ですが、代購業者には次のようなリスクもあります。
税務の専門誌では、海外の事業者のために商品の買付け・輸出を代行していた会社について、国税不服審判所が仕入税額控除の否認を認めた例が報じられています。注文をしていたのは海外の事業者で、仕入代金もその事業者から前もって受け取ったお金でまかなわれていたことなどから、「仕入れをしたのはこの会社ではない」と判断されたものです(輸出免税の否認のほうは取り消されています)。
代購業者は、誰が注文し、誰の負担で仕入れ、誰の名前で輸出しているのかを契約書や代金の流れで説明できるようにしておくことが大切です。
5.2026年11月1日からの免税店制度の見直しとの関係【これから施行される改正】
2026年11月1日から、免税店制度は「リファンド方式」に変わります。免税店はいったん消費税込みで販売し、購入者が出国するときに税関で品物を持ち出すことが確認された後に、免税店から消費税相当額が返金される仕組みです。
国税庁は、見直しの理由として、多額・多量の免税購入品が国外に持ち出されず、国内での横流しが疑われる事例が多発していたことを挙げています。
この見直しの後も、免税購入品と知りながら行った仕入れの控除制限(消費税法第30条第12項)は、同じ文言で残ります。10月31日までに免税で買われた品物が出回る可能性もあり(4章①参照)、制度が変わっても、仕入れのときの確認と記録が大切なことは変わりません。
出典:国税庁「免税購入品と知りながら行った課税仕入れに係る仕入税額控除の制限」お知らせ欄、国税庁「輸出物品販売場制度のリファンド方式への見直し 特設ページ」、消費税法第8条・第30条第12項(2026年11月1日施行版・未施行、e-Gov法令検索)
チェックリスト:仕入れの前に確認したいこと
- □ 持ち込んだ人は日本に住んでいるか(本人確認書類で確認したか)
- □ 本人確認書類に不自然な点はないか
- □ 品物に免税用の包装やその跡がないか
- □ 同じ人・同じ業者から、同じ品物が大量・定期的に持ち込まれていないか
- □ 付き添いの人が主導していないか、持ち主として不自然な様子はないか
- □ 仕入先がSNSで「買い子」を募集していないか
- □ 入手経路を確認し、記録を残したか
- □ 支払いは本人(仕入先)名義の口座への振込みにしたか
- □ 疑わしいときに「買わない」判断ができる社内ルールがあるか
※国税庁の例示をもとに、筆者がチェックリストの形にまとめたものです。
まとめ
- 2024年4月1日以後、免税購入品と知りながら仕入れた品物の消費税は、仕入税額控除ができません。古物商等特例を使う場合も同じです。
- 輸出して還付を受けている会社では、その分だけ還付額が減ることになります。
- 国税庁は、非居住者からの買取り、免税用の包装、大量・定期的な持込み、SNSでの買い子募集などを疑うべき場面として挙げています。
- 本人確認・入手経路の確認と記録・振込みでの支払い・場合によっては見送り、が基本の対応です。
- 2026年11月の免税店制度の見直し後も、この制限は続きます。
参考資料
- 国税庁「免税購入品と知りながら行った課税仕入れに係る仕入税額控除の制限」(令和6年5月・令和7年5月改訂)
- 国税庁「令和6年4月 消費税法等改正のお知らせ」
- 国税庁「インボイスQ&A 問106(古物商等の古物の買取り等)」
- 国税庁「不正な免税110番 ~STOP!免税店制度の不正利用~」
- 国税庁「消費税のあらまし 4 免税される輸出取引は?」
- 国税庁「輸出物品販売場制度のリファンド方式への見直し 特設ページ」
- 消費税法第8条・第30条第12項(2026年10月1日施行版、2026年11月1日施行版)(e-Gov法令検索)
本記事は2026年10月17日時点の国税庁の公表資料等にもとづく一般的な解説です。個別の取引の取扱いについては、税理士または所轄の税務署にご相談ください。
PREV |