外国人旅行者向け消費税免税制度の見直し【令和7年度税制改正大綱】:インバウンド消費の促進と不正防止を目指して

執筆者 中国語対応税理士 岩谷敦史
Contents
はじめに
外国人旅行者向け消費税免税制度は、日本で購入した商品を海外へ持ち帰る際に消費税が免除される仕組みです。この制度はインバウンド消費の拡大を目的に設けられていますが、近年、不正利用のリスクが指摘されています。本記事では、令和7年度税制改正大綱に基づく見直し内容を解説し、その影響と新たな課題について詳しくご紹介します。
以下の改正は令和8年11月1日(2026年11月1日)から施行する。
消費税免税制度の概要と目的
外国人旅行者向け免税制度の意義
- 制度の仕組み
外国人旅行者向け消費税免税制度は、旅行者が日本国内で購入した商品を国外に持ち出すことを条件に、消費税を免除する仕組みです。免税店での購入と特定の手続きが必要です。 - 目的
この制度は、インバウンド消費の拡大を図り、日本経済を活性化させるための重要な政策ツールとして位置づけられています。 - 課題
不正利用のリスクや免税手続きの煩雑さが問題視されており、見直しが求められていました。
免税方式の見直し
リファンド方式への移行
- 新方式の導入
出国時に商品の持ち出しが税関で確認された場合に免税が成立し、旅行者に消費税相当額が返金される「リファンド方式」へと移行します。 - 実務上の流れ
1.消費税相当額を含めた価格で販売する。
2.出国時に持出しが確認される。
3.輸出物品販売場を経営する事業者から免税購入対象者に対し消費税相当額を返金する。 - 期待される効果
免税店の事務負担が軽減され、旅行者への返金プロセスが明確化されることが期待されています。また、空港での混雑防止に向けた環境整備も進められる予定です。
税関確認情報の保存
- 税関確認情報の活用
購入後90日以内に出国地の税関で確認された情報を、免税店が保存することが求められます。この情報は、国税庁の免税販売管理システムを通じて提供されます。
免税購入対象者の義務
- 旅行者の責任
購入商品は出国時に税関で確認を受け、国外に持ち出すことが必須条件となります。この手続きにより、制度の適正な運用が確保されます。
免税対象物品と販売手続の見直し
免税対象物品の変更
- 区分と要件の廃止
一般物品と消耗品の区分を廃止し、消耗品の購入上限額(50万円)および特殊包装の要件を撤廃します。 - 特定物品の扱い
金地金など不正購入のリスクが高い物品は、免税対象外とされることが新たに定められます。
高額商品の記録強化
- 記録情報の追加
100万円(税抜)以上の高額商品について、シリアルナンバーなどの特定情報を購入記録に加え、取引の透明性を確保します。
船舶観光上陸許可手続
- 新たな手続き
船舶で来日した観光客について、上陸許可書や旅券を提示し、免税店は購入記録情報を提供する義務を負います。
輸出物品販売場の許可要件の見直し
許可要件の変更
- 許可区分の廃止
一般型と手続委託型の区分を廃止し、購入記録情報および税関確認情報の適切な管理が許可要件となります。 - 許可取消要件の追加
購入記録情報の提供が不十分で税関確認に支障がある場合、輸出物品販売場の許可が取り消される可能性があります。
基地内輸出物品販売場制度の廃止
- 簡素化の実現
制度の効率化を図るため、基地内輸出物品販売場制度を廃止し、全体の運用を簡素化します。
新制度施行の準備と課題
環境整備と周知活動
- 空港などでの整備
新方式導入に伴い、空港や税関でのインフラ整備が進められます。 - 広報活動
関係省庁と業界団体が連携し、新制度の周知と広報を強化する予定です。
まとめ
外国人旅行者向け消費税免税制度の見直しは、不正利用を防止しつつ、インバウンド消費のさらなる拡大を目指す重要な改正です。リファンド方式への移行や免税対象物品の範囲見直しにより、制度の透明性と効率性が向上することが期待されます。旅行者の利便性を高めつつ、免税店の負担を軽減する新制度の円滑な施行が、日本の観光政策の成功に大きく寄与するでしょう。


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