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はじめに
海外から商品の仕入れを行う企業は年々増えています。しかし「輸入取引」は国内取引と異なり、関税や輸入消費税の支払いが発生するだけでなく、帳簿の付け方や必要書類も特殊です。
- 税務調査で見られやすいポイントとして、輸入時に支払う消費税(輸入消費税)の処理や証憑の保存が挙げられます。
- 「国内仕入と同じやり方」で処理してしまうと、仕入税額控除が認められなかったり、逆に過剰に計上してしまったりするリスクが。
そこで本記事では、会社経理・会社の社長、輸入せどりをされている個人事業主様にむけて、実務の流れから仕訳方法・税務調査対策まで、理論的かつ具体的に解説します。
「輸入 消費税 仕訳」のキーワードで情報収集されている方のために、最新の税制や注意点も網羅しましたので、ぜひ保存版としてご活用ください。
輸入取引における消費税の基礎知識
輸入取引と国内取引の違い
日本の消費税は「国内で行われる取引」に原則課税されますが、外国貨物の輸入も例外的に課税対象です。
- 輸入した時点で、保税地域から貨物を引き取る際に、税関にて消費税を納めることになります。
- この「税関で納める消費税」が輸入消費税(輸入時消費税とも呼ばれる)です。
消費税の納税義務者は誰?
輸入貨物に関する納税義務者は、輸入者本人です。実務では、通関業者(FedExやDHLなど)が税金を立替えて請求してくるパターンが多いものの、最終的には輸入者がその立替分を負担する形となります。
輸入消費税の仕入税額控除
輸入時に支払う消費税も、仕入税額控除の対象になります。
- 国内取引の仕入れと同様に、課税売上がある事業者はその輸入消費税を消費税申告時に控除できます。
- ただし、**輸入許可通知書(税関が発行する書類)**の保存が必須となる点に注意しましょう。
輸入取引で必要となる関連書類と読み取り方
インボイス(商業送り状)
- 海外の仕入先が発行する商業送り状。
- 商品の価格(本体価格)・数量・取引条件(CIFやFOBなど)などが記載され、税関申告の基礎資料となります。
運送状(Air Waybill / Bill of Lading)
- 国際宅配業者や航空会社が発行する運送状。
- 運賃や保険料の有無を確認し、消費税の課税標準に含まれる場合は合算して計算します。
輸入許可通知書(輸入許可書)
- 税関が輸入を正式に許可した証明書。
- 課税価格や関税額、輸入消費税(国税・地方)の確定額が明示されています。
- 仕入税額控除の証憑として7年間の保存が必須。
通関業者からの請求書
- FedExやDHL等が関税・輸入消費税などを立替納付した後、輸入者へ請求する際の明細書。
- 「関税」「輸入消費税(内国消費税・地方消費税)」「通関手数料」などの内訳が記載されています。
ワンポイント
実際の仕訳を切る際には、「輸入許可通知書の金額」と「通関業者の請求書の内訳」が一致しているか必ず確認してください。誤差があると仕入税額控除の金額も狂ってきます。
輸入消費税の計算方法
課税価格の算定
消費税の課税標準となる「課税価格」は、
- 商品の価格(インボイス価格)
- 運賃(Freight)
- 保険料(Insurance)
を合算したCIF価格がベースとなり、そこに関税額などを加えて算出されます。
消費税の内訳
- 国税分(標準税率の場合は7.8%)
- 地方消費税分(国税分の22/78に相当:2.2%)
標準税率10%の内訳は上記のとおり。食品など**軽減税率8%**の場合は国税分6.24%・地方消費税分1.76%となります。
実際の計算は税関が行う
課税価格や税率をもとに税関が輸入消費税を計算し、輸入許可通知書に「国税◯◯円」「地方消費税◯◯円」と記載します。実務では、この数値をそのまま仕訳に反映します。
【具体例】輸入取引の仕訳パターン
ここでは税抜経理を前提とした仕訳例を示します(※税込経理の場合は、支払った消費税相当額も仕入高に含める方法となります)。
前提条件
- 商品代金(海外仕入): ¥500,000(不課税)
- 関税: ¥70,000(不課税)
- 輸入消費税(国税): ¥44,400
- 輸入消費税(地方税): ¥12,523
- 通関手数料: ¥80,000(国内取引につき課税仕入)
- 通関手数料に対する国内消費税: ¥8,000
- 通関業者からの請求合計: ¥214,923(= 70,000 + 44,400 + 12,523 + 80,000 + 8,000)
商品の仕入計上
- 輸入品の本体価格には国内消費税は含まれないため、「不課税取引」に区分
税金・通関手数料の計上
- 関税は仕入諸掛の一部(不課税)
- 輸入消費税は、仮払消費税(国・地方)に分けて計上
- 通関手数料等の国内取引は通常の課税仕入として仕訳
ポイント
- 税区分を間違えて「課税仕入10%」で商品代金そのものを計上すると、過大計上のリスクがあります。
- CIF価格+関税が消費税課税標準となるため、必ず税関通知の正確な税額を使用してください。
よくあるミス・注意点・税務調査で指摘されやすいポイント
【ミス1】輸入許可通知書を保管していない
- 仕入税額控除を受けるためには、輸入許可通知書が必要。
- 紛失すると控除が認められず、追徴課税につながるリスクも。
【ミス2】輸入仕入を国内取引と同じように処理
- 本来は「海外仕入(不課税)」+「仮払消費税(輸入消費税)」で分けるべきところを、一括10%の課税仕入としてしまうミスが多い。
- 税務調査で帳簿の消費税区分を精査されるケースは非常に多いです。
【ミス3】関税や運賃を原価に含めない
- 関税・国際送料は在庫原価に含める必要があります。
- 計上漏れすると在庫評価が過小になり、後日修正を迫られることがあります。
【ミス4】海外インボイスの価格が実態と異なる(過少申告)
- いわゆる「アンダーバリュー」で低いインボイス価格を申告していると、税関の事後調査で追徴される可能性大。
- 過少申告が判明すると消費税のみならず関税の追加納付、さらにはペナルティ課税もあり得ます。
税務調査では
- インボイス、運送状、輸入許可通知書、通関業者からの請求書等を突合して整合性を確認します。
- 書類の不備や計上ミスはすぐに指摘対象となるので、必ず一連の証憑を7年間保管しましょう。
会計ソフトでの仕訳入力のコツ
輸入用の税区分を活用
- 弥生会計やMFクラウド、freeeなど主要会計ソフトには、輸入取引専用の税区分(輸本、輸税など)が用意されています。
- 国税分・地方税分を分けて入力できる設定にしておくと、後々の申告がスムーズ。
仕訳辞書で効率化
- 輸入通関費や国際宅配業者の請求は、パターン化された仕訳になることが多いです。
- ソフトの「仕訳辞書」機能で典型的な仕訳を登録しておけば、毎回同じ科目・税区分を手入力する手間を省けます。
軽減税率にも対応
- 食品等で軽減税率8%の輸入消費税が発生する場合、会計ソフトの軽減税率設定を確認し、正しい国税率・地方税率(6.24%+1.76%)を使う必要があります。
まとめ:正しい仕訳と証憑管理で税務リスクを回避しよう
輸入取引における消費税の仕訳は、国内取引とは異なる独特のプロセスを踏むため、どうしても複雑になりがちです。しかし、
- 課税標準の正しい把握(CIF価格+関税)
- 輸入消費税の仕入税額控除要件(輸入許可通知書等の保存)
- 関税・運賃・手数料の適正計上(不課税・課税の区分)
といった基本ポイントを押さえ、会計ソフトの税区分設定や書類の整合性チェックを怠らなければ、スムーズに処理できます。
「輸入 消費税 仕訳」のミスは税務調査で非常に目立つ論点です。特に、輸入許可通知書の保存不備や誤った税区分は指摘されやすいです。今のうちから証憑類を整備・保管し、会計処理ルールを見直しておきましょう。
もし判断に迷う場合や大きな取引が発生する場合は、輸入消費税の取扱いに慣れた税理士に相談することも有効です。
正確な輸入消費税の処理を行い、適切に仕入税額控除を受けることで、コストを最適化しながら税務リスクを低減させていきましょう。


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