国外移送(消費税法第31条第2項)を活用した輸出免税と消費税還付の解説

国外移送における消費税還付は、輸出に関連する法人にとって重要な節税手法です。
輸出とは異なり、自社の製品を国外の倉庫に販売する前に持ち込む状態のものとなります。
この場合、消費税法第31条第2項に基づき、課税売上割合の計算にFOB価格を利用する方法や、国外移送を輸出免税として取り扱う条件についての理解は不可欠です。
本記事では、国外移送の基本から、課税売上割合の計算方法、FOB価格の概要、正しい申告書の作成方法まで、税理士の視点から分かりやすく解説します。

この記事を読んでほしい人

  • 消費税還付を活用したい法人経営者や輸出業者
  • 輸出免税の申告を適切に行いたい個人事業主
  • 輸出免税申告のサポートを税理士に相談したい方

国外移送(第31条第2項)の概要

消費税法第31条第2項は、国外移送に関する特例規定であり、法人や個人事業主が国内から国外へ商品を移送する場合に、その取引を「輸出取引」として扱うことを可能にします。
この特例により、通常は課税対象とならない国外移送が輸出免税取引と認定され、国内仕入れにかかった消費税の還付を受けられる可能性が高まります。

制度の意義

  • 課税の公平性を確保:輸出を行う法人と国内販売を行う法人の課税条件の公平を保つため
  • 国際競争力の維持:国外消費に対して国内の消費税がかからないことで、日本企業の国際的な価格競争力を維持するため

たとえば、日本の本社から海外支店へ商品を移送する場合、FOB価格を課税売上割合に計上することで、輸出免税としての条件を満たしやすくなり、消費税の還付を受けやすくなります。

 輸出免税として取り扱える旨

国外移送を輸出免税として認めるためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 課税事業者による取引であること:消費税納付義務のある事業者が行う国外移送であることが求められます。
  • 取引が国内で発生していること:輸出の準備を日本国内で行い、そこから国外へ移送する形であること。
  • 課税資産の譲渡等に該当すること:輸出品としての性質を持つもので、課税資産の譲渡に当てはまること。
  • 輸出取引として証明されていること:税務署に輸出証明書や契約書、輸出許可証を提出し、輸出取引であることを証明すること。

これらの条件を満たすことで、国外移送が輸出免税として認定され、消費税還付が受けられる可能性が高まります。

課税売上割合の計算方法

国外移送を輸出免税として扱う際には、課税売上割合にFOB価格を加算して計算することがポイントです。

計算方法

通常、課税売上割合は次の式で計算されます。

  • 一般的な計算式:課税売上割合 = (課税売上 ÷(課税売上 + 非課税売上))

国外移送にFOB価格を含めた場合、次のように調整されます。

  • FOB価格を含めた計算:課税売上割合 = (課税売上 + FOB価格) ÷(課税売上 + 非課税売上 + FOB価格)

これにより、輸出時のFOB価格が課税売上に含まれ、消費税還付対象額が増加し、法人のキャッシュフロー改善が期待できます。

FOB価格の意味

FOB(Free On Board)価格は、商品が輸出港で船積みされた時点で、売り手から買い手にリスクと所有権が移転する価格のことを指します。
国外移送での輸出免税申告においては、このFOB価格が取引の基準価格として採用されます。

申告書の作成方法

国外移送を輸出免税として申告するために必要な手順と書類は以下の通りです。

必要書類

  • 輸出許可書や輸出証明書:輸出の事実を証明する基本的な書類。
  • 輸出物品販売場での購入誓約書:特定の輸出用物品に必要な書類です。
  • 輸出の事実を示す帳簿や請求書:取引先や契約内容、商品、価格などが明記されたもの。

消費税の申告書作成の手順

  1. 国外での販売処理:これは国外での販売であるので不課税(対象外)取引として売上処理をします。
  2. 国外移送時の輸出許可書の確認:FOB価格を確認して、別紙で、課税売上割合に計算させる金額の集計を行います。
  3. 消費税の確定申告:会計資料からできる消費税集計表にFOB価格の集計を行ったものを加算して、課税売上割合等の計算を行います。

まとめ

国外移送における輸出免税適用は、消費税負担の軽減に有効です。
消費税法第31条第2項を利用してFOB価格を用いた課税売上割合の計算が可能になり、輸出業に注力する法人にとって消費税還付の効果が期待できます。
輸出免税申告では、税理士と連携しながら正確な手続きと書類の準備が欠かせません。

FAQ(よくある質問)

  • 国外移送で消費税還付を受けられる理由は?
    • 輸出を行う法人と一度資産を移動してから国外で販売を行う法人の課税条件の公平を保つため
  • 国外移送の課税売上高の計算は?
    • 通常の会計資料からでる消費税集計表にプラスしてFOB価格を集計する資料を作って加算する必要があります。
  • FOB価格とは何ですか?
    • 輸出港で商品が積み込まれた時点で所有権が移転する価格で、消費税計算においても利用されます。
  • 消費税申告の際に必要な書類は?
    • 輸出許可書、購入誓約書、輸出証明書などが必要です。
  • 税理士は消費税還付の手続きに役立ちますか?
    • はい、申告手続きを効率化し、リスク軽減に貢献します。
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