日本法人の中国支店における給与・役員報酬の源泉徴収ガイド

日本法人の中国支店で働く従業員や役員が、非居住者の場合の給与および役員報酬に対する源泉徴収には特定のルールがあります。この記事では、税理士や経理担当者が知っておくべき、給与と役員報酬に関する源泉徴収のポイントと、日中租税条約に基づく特例について詳しく解説します。中国語対応税理士がサポートする際にも参考になる内容です。

この記事を読んで欲しい人
このガイドは、
日本法人の中国支店で勤務する非居住者従業員や役員、および
中国人経営者や日本在住の中国人従業員の給与を担当する社労士・税理士や経理担当者・給与担当者
向けです。
特に、日中租税条約や源泉徴収ルールについての知識を深め、適切な税務手続きを行いたい方に役立つ情報を提供しています。

非居住者の給与所得に対する源泉徴収【中国での課税の基本】

日本法人の中国支店で働く非居住者の給与所得に関しては、原則として勤務地である中国が課税権を持ちます。
これは、従業員がその勤務地に対して所得税の対象となるという一般的な税務ルールに基づいています。
中国での課税手続きに対応する際、現地の税務機関と連携して対応することが推奨されます。

短期滞在者の免税条件【日中租税条約の特例】

非居住者が「短期滞在者」に該当する場合、日中租税条約に基づき中国での課税が免除され、日本側の課税が適用されます。
この特例が適用されるためには、以下の条件を満たす必要があります:

  • 中国での滞在が連続する12か月の間に183日以下であること
  • 報酬が日本法人から支払われること
  • 報酬が中国支店から支払われないこと

ポイント
短期滞在者免税の条件を満たすかどうかは、経理や人事部門で正確に把握することが重要です。
該当するかどうか事前に確認し、手続きを進めましょう。

役員報酬の源泉徴収ルール【課税対象と注意点】

非居住者である役員が日本法人の中国支店から役員報酬を受け取る場合、その支払い元が日本法人であれば日本での源泉徴収が必要です。
役員報酬は従業員給与とは異なり、勤務地に関係なく支払い元がある日本で課税されます。

注意点
非居住者役員の報酬を日本で源泉徴収するためには、各支払時点での申告・納付が求められるため、経理部門や税理士としっかりと連携し、正確な処理を行う必要があります。

租税条約適用の手続き【届出書と必要書類の準備】

租税条約の適用を受けるには、以下の手続きが必要です:

  1. 「租税条約に関する届出書」の提出
    • 給与支払日の前日までに日本法人を通じて所轄税務署に提出します。
  2. 必要書類の準備
    • 「居住者証明書」などの必要書類を準備し、税務署に条件を証明できるようにします。

ポイント
租税条約の届出書の提出が遅れると、免税措置が適用されないことがありますので、注意が必要です。
日本と中国の税務処理に詳しい税理士のアドバイスを受けながら進めるとスムーズです。

支払い方法と源泉徴収の実務【外貨・国外での支払い】

外貨で支払う給与や役員報酬については、円に換算して源泉徴収を行います。
換算は支払期日の電信買相場(TTB)が適用され、支払日のレートでの換算が可能です。
また、支払いが国外で行われる場合でも、支払い元の日本法人が国内に事務所を有する場合は日本での源泉徴収が求められます。

納付期限
国内で支払われない場合でも源泉徴収税の納付期限は通常の翌月10日ではなく、翌月末日となります。
経理担当者や税理士は、税務署の期限をしっかり把握してスケジュールを管理しましょう。

まとめ

非居住者の給与・役員報酬の源泉徴収については、日中租税条約の特例が関わることで、通常の源泉徴収と異なる手続きが必要になります。
特に中国人従業員や役員を抱える企業は、税務処理に詳しい中国語対応税理士のアドバイスを受けると安心です。
租税条約や短期滞在者免税の手続きを把握しておくことで、適切な税務処理を進め、無駄な税負担を回避しましょう。

FAQ(よくある質問)

1. 日本法人の中国支店で働く非居住者の給与はどこで課税されますか?
原則として、勤務地である中国が課税権を持ちますが、短期滞在者免税の条件を満たす場合には日本での課税が適用されます。

2. 非居住者の役員報酬はどのように源泉徴収されますか?
日本法人が支払い元であるため、役員報酬は勤務地に関わらず日本での源泉徴収が適用されます。

3. 租税条約の適用にはどのような手続きが必要ですか?
租税条約の適用を受けるには、「租税条約に関する届出書」の提出や居住者証明書の準備が必要です。

4. 外貨での支払いの場合、どのように源泉徴収を行いますか?
外貨で支払いを行う場合は、円に換算して源泉徴収します。通常、支払期日の電信買相場(TTB)が適用されますが、支払日のレートで換算しても問題ありません。支払い方法に応じて、経理担当者が確実に換算計算を行うことが重要です。

5. 国内源泉所得の国外支払いについての注意点は?
国内源泉所得であっても、支払者が日本国内に事務所を持つ場合、国外支払いでも日本で源泉徴収が必要です。納税手続きを適切に行うことで税務署とのトラブルを避けることができます。

6. 源泉徴収の納付期限はいつですか?
通常の支払いでは翌月10日が納付期限ですが、国外支払いで国内に支払い元がない場合は、納付期限が翌月末日まで延長されます。経理担当者や税理士はスケジュール管理を徹底して行いましょう。

7. 中国での短期滞在者免税の適用条件は?
短期滞在者免税を受けるには、滞在日数が12か月間で183日以下、報酬が日本の法人から支払われ、中国支店からの支払いがないことが条件です。経理担当者はこれらの条件をよく理解し、適用が可能か確認することが必要です。

8. 居住者証明書はどのように取得しますか?
居住者証明書は税務署で発行され、租税条約の適用に必要な書類です。日本の税理士と相談し、申請方法について確認しましょう。

9. 中国支店の従業員に対する給与の税務処理で気を付けるべきポイントは?
中国支店での給与の税務処理では、勤務地の課税ルールや日中租税条約に基づく特例が適用されます。経理部門や人事部門が正確に処理を行うことで、過剰な税負担を避けられます。

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